ご挨拶

20世紀末に世界銀行が『東アジアの奇跡』を発表して大きな話題となりました。この議論には賛否両論があるものの、事実として21世紀にはアジア諸国の経済発展は目覚ましいものがあります。英米や西欧諸国そして日本は20世紀の経済社会では主役でしたが、その地位が次第にアジアに移りつつあります。中国経済の改革開放政策で多くの日本企業が中国に進出しましたが、いまは異なる政治体制や制度制約に直面し、アジア周辺諸国に方向転換を図りつつあるのが現状です。

私は、過去20年間、このような時代環境の下でアジア諸研究教育機関と共同研究を実施してきました。アジア諸国からの留学生(一般および国費)を受け入れ、同時に彼らを祖国に引率しながら、日本とアジアの人材育成の橋渡しの役割を果たしてきました。そのような中で、現地情報の確保は重要な役割を担うと思うようになり、またそのためには「信頼の三角形」を形成することが不可欠であると認識するようになりました。日本政府・文科省の科学研究助成費で現地調査を行う時も、あるいは「アジア・インターンシップ(現地研修)」として日本から学生を引率して現地大学生との合同ゼミ(対話集会)や現地企業訪問、現地地域調査を実施する時にも、事前の根回しなしには実施不可能であることも体験しました。これらの研究教育活動を通じて、特にベトナムで3回の国際会議を開催し、ベトナム政府・教育訓練省から表彰されたこともあります。

中央大学の定年退職を機会に、ベトナム政府からは天然資源環境省戦略政策研究所(ISPONRE)の顧問の要請を受け、また日本ではこれらのアジアの経験を活かすように請われ、日越緑化事業を支援する研究所を開設することになりました。日本とベトナムの間の懸け橋となりながら「信頼の三角形」を形成し、緑化事業が発展できるように祈念しております。

 

日越緑化支援事業研究所代表
緒方俊雄